ビジネス微分積分(business calculus)

ビジネス 微分積分


微分積分のおさらい


1.微分積分の歴史

 17世紀に欧州で確立された微分積分学には重要人物が2人登場します。イギリスの偉大な科学者であったニュートンと、ドイツの哲学者であり数学者でもあったライプニッツです。 
                                    
 ニュートン(英:1643〜1727:84歳没)               ライプニッツ(独:1646〜1716:70歳没)
 1704年:ニュートン『求積論』で微分積分の成果を発表     1684年:ライプニッツ『微分積分の論文』発表

 彼らは仲良く微分積分学を作ったのではありません。むしろどちらかが先に微分積分学を創始したかについて、イギリスとドイツの学会を交えてかなり激しく争った仲でした。年代的に言えば、微分積分の概念を発想したのはニュートンが先でしたが、論文として公表し世に送り出したのはライプニッツの方が先でした。そのためイギリスの学会は、ライプニッツはニュートンの未発表論文を盗作したと非難しました。当然ライプニッツ側も黙っておらず、激しい非難の応酬が何年もの間にわたって続くことになってしまうのですが、彼らの微分積分学の組み立て方はやや異なっており、現在では2人は独立に微分積分学を構築したと考えられています。
 17世紀に生きた数学の2人の天才は、ニュートンは84歳没、ライプニッツは70歳没と当時としては誠に長寿でした。この時代の音楽界では「G線上のアリア」のバッハ(1685年〜1750年)が活躍するより少し前の時代です。日本では、徳川5代将軍・徳川綱吉の元禄時代であります。そうです、微分積分は300年以上前にできた“古典的数学”なのです。


2.微分(differentiation)

 微分を理解する前に極限を理解する必要があります。極限とは”限りなく〇〇に近づく”ことです。1次関数y=x+1は、xが1に限りなく近づけば、yは2に限りなく近づきます。これを2に収束するといい、2をy=x+1の極限値といいます。
        
関数y=f(x)についてx=aのときはy=f(a)で表わします。変数xがaからbまで変化するとき、yはf(a)からf(b)まで変化します。
△y=f(a+△x)-f(a) 
                             

 平均変化率はとなります。△xを限りなく0に近づければ、平均変化率が一定の値に収束するならば、この極限値を関数y=f(x)のx=aにおける微分係数(differential coefficient)といい、f’(a)で表わします。
    f’(a)=

 微分係数はa点での変化率ですが、これをy=f(x)について関数f’(x)をその導関数(derived function)といい、f’(x)で表わします。導関数を求めることを,微分といいます。

凅 がゼロに近づくと,直線はxにおけるf(x)の接線に近づきます。「導関数を求める(微分)」とは,関数の接線の式を求めることなのです。
 微分の表示には、ニュートンは、、ライプニッツは、ラグランジュはというように表示しました。現代では、ライプニッツ流とラグランジュ流が用いられています。

【ビジネス微分積分で重要な事項】
 微分により、利益/売上/コスト/cashflow等の最大値/最小値を求めることができます。考慮されている区間で一番大きいのが最大値(global maximum,maximum value)、ある区間で一番大きいのが極大値(local maximum,maximul value)、小さいのも同様に最小値(global minimum,minimum value)、極小値(local minimum,minimul value)といいます。最大値は極大値ですが、極大値は必ずしも最大値ではありません。極大値と極小値を極値といいますが、これは導関数f'(x)が0になるところです。f'(x)が+から-なら凸で極大値、-から+なら凹で極小値になります。
 例えば、y=x^3-3xのグラフは次のようになりますが、極小値が-2で極大値が+2になります。
          
2次元方程式では極値と最大値・最小値が一致しますので、微分した導関数を0としてxを求めれば、最大値・最小値が求まります。

【重要な微分公式】
            
   

3.積分(integral)

 積分は大きく2つに分けられます。
(1)定積分(definite integral)
 定積分とは、座標平面上に関数が描くグラフと座標軸に囲まれた一定の部分の面積を求める方法をいいます。どんなに複雑な形状の図形でも,細かくスライスすれば,長方形の短冊の集合に置き換えることができます。短冊の面積は「スライス幅×短冊の高さ」です。短冊の面積をすべて合計すれば,図形の面積とほぼ等しくなります。これが定積分の原理です。図形の形状を表す関数を f(x) ,図形をスライスする幅を dx とすると,図形の面積は次の式で得られます。
   

 積分の式中のdxは、非常に小さな長さを表しています。また、f(x)dxは、f(x)とdxの積を表しています。f(x)はある点xにおけるのf(x)値であることから、a-b間を非常に細かくした長方形の集合といえます。a-b間を極限まで細かくすれば、f(x)のa-b間の面積が求められます。このように,グラフ上のある部分の面積を,具体的な数値あるいは変数で示す方法が定積分です。

(2)不定積分(indefinite integral)
 もう1つは,微分の逆の演算で微分する前の関数を求める方法です。これを不定積分、あるいは原始関数(primitive function)を求めるといいます。
下の例では,定数項を含む式の微分をすると,定数項が消去されます。このことから,微分の逆演算である積分を行うと,定数項が表れるはずです。
            微分
          <−−−>   
            積分

 この定数項 C を積分定数(integration constant)といいます。単純に積分しただけでは,この積分定数を決定できません。決定されない間は,積分定数を定数記号 C で表します。

【ビジネス微分積分で重要な事項】
 面積を求める定積分が多用されます。実務では、複雑な計算になりますので紙と鉛筆では仕事になりません。ビジネスデータの数式化の頁にある当事務所作成のExcel VBAベースの「シンプソン公式による定積分の計算」アプリを使用します。
  

【重要な積分公式】
        




             ビジネス微分積分のひとくちメモ:ニュートンが活躍した頃の日本は?