ビジネス微分積分(business calculus)

積分の活用


1.5年間の総売上高

 A社の今後5年間の売上は以下のように予測される場合、5年間の総売上はいくらですか?  (単位:億円)

   

次のように定積分します
    =  =19.95(億円)
  
(注)単純に1年ごとに計算し合計する場合(長方形)と積分値(2次曲線)には差異が生じますが、積分値が正解です。

                       


2.損益分岐面分析

 ある種の経営の意思決定では、ビジネス環境の激変が予測されます。その場合、不確実性を考慮に入れた意思決定をする必要があります。ビジネス環境が変化しない前提の”点”で考慮するより、”面”で考慮したほうがビジネス環境の変化に強い正しい意思決定ができます。損益分岐点(BEP:Break Even Point)ではなく、損益分岐面分析(BES:Break Even Space)を採用します。定積分で利益面を計算します。

  

 乙社の来期予想は下記の通りで、利益も5億円、安全余裕度も10%と低く経営的に問題があると認識された。為替や原油価格の激変により、来期の売上高は90〜100億円の範囲内に納まる可能性が高い。これらを考慮して乙社の役員会で、安全余裕度を20%に高める必要があると決定された。方法論として固定費を5億円削減する”リストラ案“と、固定費を25億円変動費化する”アウトソーシング案“が検討された。

     

来期予想、リストラ、アウトソーシングの利益計画に与えるインパクトを検討してください。

3ケースの売上高90〜100億円の利益面積を計算すると・

     


”BEP(Break Even Point)”からBES(Break Even Space)””への思考

     

 売上高の変化(90〜100億円)に対する利益面積は、リストラ→アウトソーシング→来期予想の順位となります。
利益計画上、経営的には厳しくとも利益面積が最大のリストラ策が望まれます。


3.投資案の選定

 投資案の選定には、NPVを使用するのが現在の財務マネジメントの定番手法です。前述の損益分岐面分析同様、不確実性の高い投資案件では、点ではなく面で意思決定したほうが安全です。定積分を使ってNPVの面積を計算し、経済合理的な意思決定が可能です。

  




4.IRR複数解とその対応

 現在の投資案件の意思決定の1つの悩みは、IRRが複数個計算されることがあります。これは以前から判明していましたが、実務では発生することが極めてまれで、無視できました。ところが最近は、某国の投資件で、最終年度(精算年度)でcashがマイナスになり、IRRが複数個出るのが珍しくなくなりました。この問題点をビジネス微分積分で解決します

1.IRR複数解は何故生じるのか?


2.実際のプロフィール


   
   

3.実務上の対応策
 @NPVプロフィールを作成 → 自社のWACC及びNPVを再検討する。
 A一般的にIRR複数解の生じるプロジェクトは、NPVが低いものが多い → プロジェクトを不採用にする。
      
 B初期投資、各期のインフローを再調整 → 複数解が生じないようにする。







           ビジネス微分積分のひとくちメモ:定積分によるπの計算